ドローンと電波
ドローンは、プロポ(コントローラ)と電線でつながっているわけでもないのに、何故コントローラーで操縦できるのでしょうか?
また、ドローンは電線でつながっていませんが、何故映像の伝送等もできるのでしょうか?
実は、基本的には、無線で動くものは電波が使用されていると考えて良いです。
最近のドローンはGPSのデータを受信しながら飛行したりもします。ここでも電波が使用されています。
つまり、現在、ドローンも同様に目には見えない電波が使用されていて、電波は切っても切れない関係ということになります。
ドローンのユーザーが注意しなければならない法律として「航空法」は言うまでもありませんが、それと同じくらい「電波法」が重要となります。
電波法の遵守が必要
法律の規制のない状態で、ドローンが自由に飛行され、好き勝手に電波が使用されていたらどうでしょう。
ドローンだけで考えてみても、その操縦電波が混信して墜落してしまうケースが多くなるのではないでしょうか。
電波は私たちの生活に必要不可欠な存在であり、無くなってしまえばドローンだけでなく、スマホやパソコン、その他の電子機器も必要な機能が使えなくなってしまいます。
また、混信によって、日常生活に必要不可欠なテレビ、携帯電話、パソコン等へ影響が及び使用できなくなってしまわぬよう電波法に基づき総務省が管理・監視しているわけです。
※電波法の趣旨は、「電波の公平かつ能率的な利用の確保」です。
したがって、ドローンを使用する場合、航空法だけでなく、電波法を遵守する必要があるわけです。
具体的には、日本でドローンの使用する際には、前提としては、①無線局免許、②無線従事者免許、③技術適合証明が必要となります。
以下、それぞれについて詳しく解説していこうと思います。
①無線局免許
原則は、無線局開設には免許が必要
原則として、電波法によれば、無線設備を設置し、それを操作する者が電波を発射できる状態にする(無線局の開設する)場合は、無線局ごとに総務大臣の免許を受けることが必要です。
当然として、電波を使用するドローンを使用する場合も総務大臣の免許を受けることが必要となります。
車で言えば、新規登録のようなものです。
免許を受けるためには、電波法の定める無線設備、無線の周波数等の一定の基準を満たしていることが求められます。
無線局を開局し、免許を受ける条件
このようにドローンを電波の発するコントローラーで操縦する場合も無線局の開局とされます。
日本では無線局を開局する条件として、無線局から発される電波の強さが人が通行・出入り・集合する場所などの環境で電波防護指針の規制値以下であることが定められています。
具体的には、電波防護指針とは、人体に影響のある電波の強さの最低値からおそらくこれなら安全だろうという数値を定めたものが電波防護指針の規制値です。
上記のような人が主体的に活動する環境において、この電波防護指針の規制値以下の電波を使用することが、無線局を開局のための条件となります。
並行輸入や海外購入のドローンは出力が高く、電波が強いので、よく電波防護指針の規制値をオーバーしてしまいます。
その場合は、総務大臣の免許を受けることができませんので、十分に注意しましょう。
無線局開設の免許によってそれぞれの無線局を識別
無線局免許には使用可能な電波の情報(型式・出力・周波数など)ともに、無線局を識別するために、それぞれの無線局に与えられる識別信号(コールサイン)も記載されています。
国際電気通信連合の定めた規則により、無線局は通信中は識別信号を周知させることになっています。
例えば、ラジオにおいても、原則として、一つの放送局(無線局)には一つのコールサインが割り当てられ、それぞれの無線局を識別しています。
※よくラジオなどで放送中に「JO○○、お聞きのラジオは○○です」というアナウンスが入りますが、「JO○○」の文字列が識別信号(コールサイン)です。
免許を要しない無線局について
前述したように、電波法の趣旨は、「電波の公平かつ能率的な利用の確保」です。
ドローンがこの趣旨も満たすことが明らかな「微弱無線局」や「小電力無線局」であれば、例外として無線局開設の免許は不要となります。
微弱無線局
平成27年6月1日より「微弱無線設備登録制度」が開始され、日本自動車用品工業会・電波環境協議会が指定した試験機関による公正な試験が行われ、微弱無線設備の技術基準に適合していると認められた機器には、「微弱無線適合マーク(ELPマーク)」が発行されています。
電波法に、発射する電波が著しく微弱な無線局は総務大臣の免許を必要としないと定められています。
小電力無線局
空中線電力1W以下である無線局のうち、その機能により他の無線局にその運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用することができるものでかつ、適合表示無線設備のみを使用するものをいいます。
注意したいのが、この小電力無線局は、技術基準適合証明および工事設計認証(技術基準適合証明等)を受けた技適マークのある適合表示無線設備でなければならないということです。
技適マークがあるかを確認しておきましょう。
つまり、①空中線電力1W以下である無線局で、②その機能により他の無線局にその運用を阻害・妨害しないように運用することができるもので、③一定の技術基準を満たした技適マークのある適合表示無線設備のみを使用するものであれば無線局免許や無線従事者資格が不要となります。
ドローン等に用いられている無線設備もこれらに該当する場合には、無線局免許や無線従事者資格が不要となります。
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②無線従事者免許
原則は、無線従事者免許が必要
原則は、車の運転における運転免許のようなもので、無線局の操作には無線従事者免許は必要です。
具体的には、操作の目的によって大きく分けると、趣味での使用であれば、4級アマチュア無線以上、業務での使用であれば、3級陸上特殊無線技士以上が必要です。
趣味での使用のアマチュア無線の資格は3級を基準にして整理するとわかりやすいです。
車でいえば、第一種運転免許のようなものが「3級アマチュア無線技士」で、営利目的や暗号通信では使用できないものです。
また、車でいうAT限定免許のようなものが3級アマチュア無線技士と比べて、モールス符号による通信操作を除き、出力が低めにするなどより限定されたのが「4級アマチュア無線技士」です。
大型・中型免許のようなものは、より大きな出力を必要とする「1級アマチュア無線技士」(大型)、「2級アマチュア無線技士」(中型)です。
業務用の使用(営利目的・暗号通信)であれば、第二種運転免許のようなものである「3級陸上特殊無線技士」以上必要です。
このように無線局の操作の目的や暗号通信をするかどうかや出力の大きさで必要な免許は異なってきます。
このあたりの話もこの後で詳しく説明します。
③技術基準適合証明
技術基準適合証明とは、特定無線設備(小規模無線局に使用する無線設備)が一定の技術基準に適合していることを証明するものです。
要は、車でいうと、国内で運行する自動車の構造、装置、乗車定員と最大積載量について技術的な基準を定めた「保安基準」に適合しているかどうかを検査する車検のようなものです。
いわゆる、この技適マークがついたものは、電波法上の一定の技術的な基準に適合しており、無線機器を改造等をしないで通常の使い方をしていれば、電波法に違反する電波は出ないということの証明がなされています。
ドローンをはじめ無線機器を使うには、原則、技適マークがついたものを使うことを前提ということを理解しておきましょう。
ここで注意したいのが、日本では技適マークがないものを販売することは違法ではありません。
しかし、技適マークのないドローンなどの無線機器を購入し、日本で使ってしまうと電波法違反になります。
つまり、ユーザー側が技適マークの有無については注意しなければなりません。
トランスミッター(送信機)、レシーバー(受信機)ともに技適マークは必要となります。
それぞれの技適マークの有無を必ず確認をするようにしてください。
よくわからない場合は技適マークの無いものは購入しないようにするのが良いと思います。
無線局免許、無線従事者免許はいらないのはなぜ?
このように、日本では電波を発射するドローンの使用する際には、原則としては、①無線局免許、②無線従事者免許、③技術基準適合証明(技適マーク)が必要です。
ここで、ドローンユーザーの方は、「技適マークはあるけれど、無線局免許、無線従事者免許は取得してないぞ。大丈夫なのか?」と思われるかもしれません。
結論から言えば、一部分の場合を除いて問題はありません。このことについては、ドローン飛行のために使われている周波数帯についての理解が必要です。
主に、ドローン利用に関しては、2.4Ghz帯、5.7Ghz帯、5.8Ghz帯の3つ使われています。それぞれどのように扱わなければならないのかについて合わせて見ていきましょう。
2.4GHz帯の周波数帯は無線局免許・無線従事者免許が不要
ドローンに使われている電波の中で、主流なのが2.4Ghz帯で、無線局免許・無線従事者免許が必要ありません。
したがって、ドローンユーザーのほとんどの方が無線局免許、無線従事者免許は必要ないというわけです。
無線局免許、無線従事者免許ははいらずに誰でも簡単に使えますというものです。
それゆえに、無線局免許、無線従事者免許を取らずにドローンを飛行させることができていたわけです。
しかし、身近なもので言えば無線LANも2.4Ghz帯です。
例えば、街中や住宅街のようにWi-Fi機器がたくさんある場所で飛ばせば、電波が漏れているので、混信してしまいます。
つまり、無線局免許、無線従事者免許ははいらずに誰でも簡単に使えるけど、最悪の場合、混信があって使えないこともあるというものがこの2.4Ghz帯の周波数帯です。
5Ghz帯(5.7Ghz帯と5.8Ghz帯)の周波数帯は無線局免許・無線従事者免許が必要
5.7Ghz帯
2.4Ghz帯よりも混信の避ける必要性が高く、長距離通信が必要な場合である業務用での使用による周波数帯です。
無線局開設免許とともに無線従事者免許として、3級陸上特殊無線技士が必要になります。
業務用で使う場合や公的目的で使う場合は、免許取得が不要で手軽に使用できることが重要ではありません。混信がなくて、より安全かつ効率的に電波を使用できることが重要だからです。
5.8Ghz帯
一般に、海外製品の多いFPVドローンレースに使われているFPVのゴーグルは、ほとんどが5.8Ghz帯の周波数帯です。
FPVドローンレースでは限られたエリアで複数台のドローンが飛行するわけなので、2.4Ghz帯よりも混信の避ける必要性が高いケースと言えます。
無線局開設免許とともに、無線従事者免許として4級アマチュア無線技士が必要になります。
周波数帯のまとめ
FPVドローンレースや、業務においてドローンを使用する場合は、5Ghz帯(5.7Ghz帯と5.8Ghz帯)の周波数帯であれば、無線局開設免許とともにそれぞれに対応する無線従事者免許が必要です。
こちらは、無線局免許・無線従事者免許をとらずに、電波を利用してしまうと電波法違反になってしまいます。
ドローンユーザーの多くが使用している電波が2.4Ghz帯では、無線局免許・無線従事者免許が不要となります。
こちらは、無線局免許・無線従事者免許をとらずに、電波を利用しても電波法違反になりません。
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