平成30年9月14日「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の改正がありました。

これまでは、原則、補助者を配置し 自機及び他者の有人機の監視や第三者の立入管理そして自機の周辺の気象状況の監視をしなければならないこととされていました。

しかし、この改正でさらに追加基準を満たせば、一部のドローンをはじめとする無人航空機等が上記の補助者なしで、目視外飛行できるようになり、その追加基準が明文化されました。

ここではこの補助者なしの目視外飛行に関する概要及び追加基準について解説していこうと思います。

 

hojyoshanashi

審査要領改正前は基準が不明確

実は、改正前でもかなり限定的ではありますが、補助者なしの目視外飛行は明文上可能ではありました。

改正前の審査要項ですが、「目視外飛行のための基準」の安全確保の体制として以下のように記載されていました。
 
飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周辺の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は操縦者が安全に飛行よう必要な助言を行うこと。ただし、※飛行経路の直下及びその周辺に第三者が存在している蓋然性が低いと認められる場合はこの限りでない。



つまり、上記の下線の引いてある※のケースのみの限定的に補助者なしの目視外飛行が可能ということでした。

「飛行経路の直下及びその周辺に第三者が存在している蓋然性が低いと認められる場合」と言われても、どのような場合かすぐにはピンと思いつかないかと思います。

実際に認められた場合の実績例としては、活動中の火山の火口付近、陸地から離れた海上等が挙げられます。

確かに、どちらのケースも第三者が存在している蓋然性が低いつまり、普通に考えて第三者が存在しているとは思えないケースと言えます。

ただ、このように補助者を配置しない目視外飛行を行うことはできると明文化されていたものの、その基準が不明確であったといえると思います。

 

審査要領の改正で基準が明確に

今回の審査要領の改正において、目視外飛行の従来の追加基準に加えて、「補助者を配置しない目視外飛行を行うための追加基準」が明記され、当該目視外飛行を行うことを可能とするため基準が明確化されました。

その結果、2018年11月8日には、日本郵便が国内では初めて、ドローンを使った福島県内の郵便局間の荷物輸送を補助者を配置しない目視外飛行で行っています。

※上記の活動中の火山の火口付近、陸地から離れた海上等だけでなく、主に離島、山間部への荷物配送を念頭においた改正でその追加基準もそのような状況に対応したものとなっています。(後述)

 

補助者の役割の確認

補助者なしで目視外飛行できるとはいっても、人や物に対しての安全確保という航空法の目的を十分に満たすものでなければならず、本来、その目的を満たすために補助者が果たすべき役割を他の要素で代替的に補完していかなければなりません。

したがって、新しい追加基準を少しでも理解しようとなると、補助者の役割の理解は必要になってきます。

そこで、ここでは補助者の役割をあらためて確認することにします。

具体的は、以下の4つが補助者の役割になります。

(1)第三者の立入管理

飛行経路の直下及びその周辺を常に監視し、第三者(自動車、鉄道等を含む。)が近付いた場合には、第三者又は無人航空機を飛行させる者(以下「操縦者等」という。)に注意喚起を行い、第三者への衝突を回避せること。

(2)有人機等の監視

飛行経路周辺に有人機等がいないことを監視し、有人機等を確認した場合には操縦者等に助言し、有人機等への衝突を回避させること。

(3)自機の監視

飛行中の機体の飛行状況(挙動、計画上の飛行経路とのずれ、不具合発生の有無
等)を常に監視し、継続的に安全運航を行うために必要な情報を適宜操縦者等に対し助言すること。

(4)自機の周辺の気象状況の監視

飛行中の自機の周辺の気象状況の変化を常に監視し、安全運航に必要な情報を操縦者等に対し適宜助言すること。

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追加基準

審査要項において、追加基準は、①機体についての追加基準、②無人航空機を飛行させる者についての追加基準、③安全を確保するために必要な体制についての追加基準に分類されています。


詳細は改めて審査要項をご覧いただく形にして、ここでは、補助者なしで目視外飛行する要件(追加基準)において、「全般的要件」と「個別要件」で整理し、簡単に要点をみていこうと思います。

全般的要件

①飛行場所

原則、(ⅰ)第三者が存在する可能性が低い場所(第三者の立入りを管理する範囲)で(ⅱ)一定の高度未満で飛行を行うことが必要です。

具体的には、(ⅰ)「第三者が存在する可能性が低い場所」は、山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場又はこれらに類するものが該当します。

つまり、離島や山間部でのドローンによる荷物配送などが想定されています。

このような場所を選択しなければならないとともに、後述する個別に第三者の立入りを管理する対象範囲の設定をすることで第三者が存在する可能性を低い状態にすることが求められます。

また、(ⅱ)「一定の高度未満で飛行」は通常有人航空機が飛行しない150m未満でかつ制限表面未満での飛行が求められます。

ここまでの話を一言で言えば、第三者や有人航空機と関わらないであろう場所を設定し、有人航空機が飛行するような高度では飛行させないでくださいということです。

前提として、こうした場所でないと補助者なしで目視外飛行はできません。

②機体が想定される運用できるものか

飛行させる機体は、想定される運用に耐えるものなのかということです。

具体的には、その機体が想定される運用で十分な飛行実績を有していて、想定される運用ができるであろうということです。

前提として、想定される運用に十分に耐えれなくては、より人や物件の安全確保が困難な補助者なしの目視外飛行はできません。

③不測の事態の発生時の対応の事前確認

事前に、飛行の際に、不測の事態が生じた際の対応を考えておく・確認しておくということです。

具体的には、不測の事態時に人や物件に危害を与えずに安全に着陸・着水ができること、緊急時の対処方法を定めておく、飛行経路又はその周辺が適切に安全対策を講じることができる場所なのかを確認しておくということです。
これも前提として、補助者なしの目視外飛行する上で満たすべき基準となります。

個別要件

①第三者の立入管理

補助者の役割の一つ目がこの「第三者の立入管理」です。

補助者の代わりとなる代替的な追加基準の内容としては、まず、(ⅰ)「第三者の立入りを管理する対象範囲の設定」です。

具体的には、メーカーが算出・保証した距離又は機体の性能・形状、運用方法(飛行高度、速度等)等を踏まえ、無人航空機が落下し得る範囲を考慮し、立入管理区画を設定します。

次に、(ⅱ)機体又は地上に、常に進行方向の飛行経路下に「第三者が立ち入る兆候を確認できるカメラ等を装備又は設置」するか、(ⅲ)立入管理区画について、近隣住民等に周知するなど、当該区画の性質に応じて、「第三者が立ち入らないための対策」を講じるかのどちらかを満たすようにします。

(ⅲ)の具体的内容として、立入管理区画に看板等の物理的な目印を施すとともに、問い合わせ先を明示した上でインターネットやポスターにより当該事実を広く周知するなどが挙げられます。

あくまでも、原則的な話ですが、立入管理区画を設定して、さらに第三者が立ち入らないための管理方法を講じてくださいということになります。

なお、立入管理区画に道路、鉄道、家屋上空等、第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合には、さらに追加で第三者が立ち入らないための管理方法を講じる必要になってきます。

②有人機等の監視

補助者の役割の二つ目がこの「有人機等の監視」です。

一言でいえば、有人機等への衝突を回避しましょうということになります。

まず、代替的追加基準として、(ⅰ)機体は、航空機からの視認を容易にするため、灯火を装備すること又は塗色を行うことになります。

航空機から飛行させる機体がちゃんとわかるようにして衝突を避けましょうということです。

次に、(ⅱ)無人航空機の飛行経路の周辺を飛行する航空機の運航者に事前に飛行予定を周知するとともに、航空機の飛行日時・経路等を確認の上、接近のリスクがある場合は飛行の自粛や飛行計画の変更等の安全措置を講じるか、(ⅲ)機体又は地上に、常に飛行経路周辺を監視できるカメラ等を装備又は設置し、飛行させる空域に航空機等を確認した場合は即座に着陸する等の安全措置を講じることが求められます。

つまり、原則は、事前に航空機の飛行計画を確認しておき対策をとっておくか、飛行の際であれば経路上で航空機を確実に確認できるようにして、すぐに飛行を中止できる対策をとるかのいずれかを行わなければならないということです。

③自機の監視

補助者の役割の三つ目がこの「自機の監視」です。

これは、飛行させている機体の飛行状況を常時監視するという役割です。

代替的追加基準として、補助者の代わりに操縦者等が(ⅰ)地上において、飛行している機体の状態に異常がないか、(ⅱ)地上において、飛行計画通りの経路で飛行できてるかを把握できるようにしてください、(ⅲ)これらに異常等があったら適切な対策をとれる状態が求められます。

具体的には、(ⅰ)地上において、機体の位置、進路、姿勢、高度、速度等を操縦者等が遠隔で把握できること、(ⅱ)地上において、計画上の飛行経路と現行の機体の位置の差を把握できること、(ⅲ)機体の異常又は計画上の飛行経路から逸脱することが判明した場合には、計画上の飛行経路に戻す、付近の適切な場所に着陸・着水させる等適切な対策をとることができることを満たすことが求められます。

④自機周辺の気象状況の監視

補助者の役割の四つ目がこの「自機周辺の気象状況の監視」です。

気象状況の変化を常に監視し、安全運航に必要な情報を把握する役割です。

代替的追加基準として、簡単に言えば、操縦者等が風速センサ、カメラ等を設置し、気象状況を確認でき、状況に応じ、適切に対応できるようにしておくことが求められます。

具体的には、(ⅰ)飛行経路の直下若しくはその周辺、又は機体に風速センサ、カメラ等を設置し、気象状況を操縦者等が確認できること、(ⅱ)操縦者等は、メーカーの定める機体の運用限界を超える気象状態を把握した場合には、即座に付近の適切な場所に機体を着陸・着水させる等適切な対策をとることができることが求められます。

⑤操縦者等の教育訓練

これは、無人航空機の飛行で必要な基礎操縦技量、補助者を配置して目視外飛行する場合に必要な操縦技量にさらに加えて、補助者を配置せず目視外飛行する場合の追加基準に従った適切な飛行をするための操縦技量の取得のための教育訓練を受けておいてくださいということです。

審査要項では、「遠隔からの異常状態の把握、状況に応じた適切な判断及びこれに基づく操作等に関し座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていること」とあります。

具体的な例としては、a 飛行中に、カメラ等からの情報により、立入管理区画における第三者の有無等、異常状態を適切に評価できること、b 把握した異常状態に対し、現在の飛行地点(飛行フェーズ、周辺の地形、構造物の有無)や機体の状況(性能、不具合の有無)を踏まえて最も安全な運航方法を迅速に判断できること、c 判断した方法により遠隔から適切に操作できることがあげられています。

まとめ

このように、補助者なしの目視外飛行の承認を受けるためには、人・物件の安全の確保、航空機の安全な航行の確保といった航空法の目的に対して、補助者が担っていた役割を操縦者等やその他設備で代替しなければなりません。

目視外飛行は、技術の進歩によって、さらなる審査要領の改正があり得るところではありますが、その場合でも航空法の目的を理解した運用が重要であると思います。
 

 

 

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