第三者の上空を飛行は「原則禁止」

審査要領では、許可等に係る基本的な基準の安全確保のための対策(4-3(1))として「原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと」と明記されています。

したがって、航空法で禁止されている空域での飛行・禁止されている飛行方法での飛行をする場合には、原則、第三者の上空を飛行させることはできないことになります。

ドローンをはじめとする無人航空機に対する航空法の規制は、人・物件に対する安全の確保が一つの目的ですので、ドローン等が墜落すれば人を確実に負傷させる禁止空域での飛行・禁止された飛行方法での飛行による「第三者の上空の飛行」は原則禁止と厳しい規制となっているわけです。

「第三者」とは

ここで、第三者と何かが把握できなければ、規制されている上空を理解できませんのでそのことについて説明します。

この場合の第三者とはどのような人のことをいうのかということですが、ドローンの操縦者・操縦者の関係者(補助者、催し物・大会の運営に関わる人たち等)以外の人を指します。

つまり、当該ドローンの飛行に関与している人達が第三者と言えます。

第三者の上空の飛行にかかる場合は追加基準を満たす必要

このように航空法の規制目的からいっても、厳しく原則飛行禁止とされているわけですが、それでも第三者の上空を飛行する可能性を無視できない航空法で禁止されている空域での飛行・禁止されている飛行方法(後述の3つ)があります。

原則禁止なものに関わる飛行なわけですから、厳しい追加基準が要求されることになります。

3つの飛行形態に応じた追加基準

3つの飛行形態

「飛行形態に応じて追加基準」は課せれますが、実際に課されるのは以下の3つの飛行形態による飛行をする場合です。


①人又は家屋の密集している地域の上空における飛行
②地上又は水上の人又は物件との間に所定の距離を保てない飛行
③祭りやライブ会場などの催し場所の上空における飛行


審査要領において、いずれの飛行形態の場合も「無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、・・・・・の上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件とし、この場合において、次に掲げる基準に適合すること」との文言があり、それぞれの飛行形態での飛行をする場合には第三者の上空で無人航空機を飛行させないように追加基準を満たすことが明記されています。

ドローンをはじめとする無人航空機等がこれらの飛行形態で第三者の上空を飛行し、落下すれば人を負傷させてしまう可能性が極めて高いものです。

上記の文言そして航空法の規制目的である人・物件に対する安全の確保からも、厳しい追加基準となるのは当然といえるでしょう。

追加基準の具体的内容

ここからは、具体的にその追加基準をご紹介します。(以下、無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領より抜粋)

追加基準の分類

分類としては、①最大離陸重量に関わらず、上記の3つの飛行形態ごとに課される追加基準と②(ⅰ)最大離陸重量が25kg未満か(ⅱ)25kg以上かでによってさらに課される追加基準があります。

最大離陸重量に関わらず求められる追加基準

最大離陸重量に関係なく、3つの飛行形態ごとそれぞれの場合に課される追加基準は追加基準は以下の内容です。

それぞれの飛行形態特有の基準もあり、多少の相違もありますが、大体部分は同じです。

特有基準並びに同じ基準を確認しながらみていただければと思います。

①人又は家屋の密集している地域の上空における飛行

(1)無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、人又は家屋の密集している地域の上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件とし、この場合において、次に掲げる基準に適合すること。

a)機体について、第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。
当該構造の例は、以下のとおり。
・プロペラガード
・衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着 等

b)無人航空機を飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。

c)安全を確保するために必要な体制について、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること。

・飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う
補助者の配置等を行うこと。

②地上又は水上の人又は物件との間に所定の距離を保てない飛行

(1)無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件とし、この場合において、次に掲げる基準に適合すること。

a)機体について、第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。
当該構造の例は、以下のとおり。
・プロペラガード
・衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着 等

b)無人航空機を飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。

c)安全を確保するために必要な体制について、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること。
・飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

③催し場所の上空における飛行の場合

(1)無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、催し場所上空であっても、第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件とし、この場合において、次に掲げる基準に適合すること。ただし、a)並びにc)エ)、オ)及びカ)の基準については、機体に飛行範囲を制限するための係留装置を装着している場合、第三者に対する危害を防止するためのネットを設置している場合又は製造者等が落下距離(飛行の高度及び使用する機体に基づき、当該使用する機体が飛行する地点から当該機体が落下する地点までの距離として算定されるものをいう。5-6(エ)の表において同じ。)を保証し、飛行範囲の外周から当該落下距離以内の範囲を立入禁止区画(第三者の立入を禁止する区画をいう。5-6(エ)の表において同じ。)として設定している場合等は、この限りではない。

a)機体について、次に掲げる基準に適合すること。
ア)第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。
当該構造の例は、以下のとおり。
・プロペラガード
・衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着 等
イ)飛行が想定される運用により、10回以上の離陸及び着陸を含む3時間以上の飛行実績を有すること。

b)無人航空機を飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。

c)安全を確保するために必要な体制について、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること。
ア)飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
イ)飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状
況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行
させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
ウ)飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う
補助者の配置等を行うこと。
エ)催しの主催者等とあらかじめ調整を行い、次表に示す立入禁止区画を設定すること。


moyooshikyori

オ)風速5m/s以上の場合には、飛行を行わないこと。
カ) 飛行速度と風速の和が7m/s以上となる場合には、飛行を行わないこと。

 

 

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最大離陸重量による分類

今度は最大離陸重量によって、上記の追加基準にさらに追加される追加基準のとなります。

こちらは3つの飛行形態ごとに最大離陸重量が25kg未満か25kg以上かで分類されますが、内容は同じものです。

続けて、以下に具体的な内容を示します。

最大離陸重量25kg未満の場合

a)機体について、次に掲げる基準に適合すること。

ア)飛行を継続するための高い信頼性のある設計及び飛行の継続が困難となった場合に機体が直ちに落下することのない安全機能を有する設計がなされていること。

当該設計の例は、以下のとおり。

・バッテリーが並列化されていること、自動的に切替え可能な予備バッテリーを装備すること又は地上の安定電源から有線により電力が供給されていること。
・GPS等の受信が機能しなくなった場合に、その機能が復帰するまで空中における位置を保持する機能、安全な自動着陸を可能とする機能又はGPS等以外により位置情報を取得できる機能を有すること。
・不測の事態が発生した際に、機体が直ちに落下することがないよう、安定した飛行に必要な最低限の数より多くのプロペラ及びモーターを有すること、パラシュートを展開する機能を有すること又は機体が十分な浮力を有する気嚢等を有すること 等

イ)飛行させようとする空域を限定させる機能を有すること。

当該機能の例は、以下のとおり。

・飛行範囲を制限する機能(ジオ・フェンス機能)
・飛行範囲を制限する係留装置を有していること 等

ウ)第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。

当該構造の例は、以下のとおり。

・プロペラガード
・衝突した際の衝撃を緩和する素材の使用又はカバーの装着 等

b)無人航空機を飛行させる者について、次に掲げる基準に適合すること。

ア)意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。
イ)飛行の継続が困難になるなど、不測の事態が発生した際に、無人航空機を安全に着陸させるための対処方法に関する知識を有し、適切に対応できること。
ウ)最近の飛行の経験として、使用する機体について、飛行を行おうとする日からさかのぼって 90 日までの間に、1時間以上の飛行を行った経験を有すること。

c)安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。

・飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、できる限り、第三者の上空を飛行させないような経路を特定すること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・飛行経路周辺には、上空で無人航空機が飛行していることを第三者に注意喚起する補助者を配置すること。
・不測の事態が発生した際に、第三者の避難誘導等を行うことができる補助者を適切に配置すること。

最大離陸重量25kg以上の場合

a)機体について、航空機に相当する耐空性能を有すること。

当該性能の例は、以下のとおり。

・規則附属書第1において規定される耐空類別がN類に相当する耐空性能

b)無人航空機を飛行させる者について、次に掲げる基準に適合すること。

ア)意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。
イ)飛行の継続が困難になるなど、不測の事態が発生した際に、無人航空機を安全に着陸させるための対処方法に関する知識を有し、適切に対応できること。
ウ)最近の飛行の経験として、使用する機体について、飛行を行おうとする日からさかのぼって 90 日までの間に、1時間以上の飛行を行った経験を有すること。

c)安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。

・飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、できる限り、第三者の上空を飛行させないような経路を特定すること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・飛行経路周辺には、上空で無人航空機が飛行していることを第三者に注意喚起する補助者を配置すること。
・不測の事態が発生した際に、第三者の避難誘導等を行うことができる補助者を適切に配置すること。


※最大離陸重量25kg以上の場合は、前提として「審査要領4-1-2 」最大離陸重量25kg以上の無人航空機の機能及び性能についての基準にも適合している必要があります。

まとめ

航空法の規制にあたるドローンをはじめとする無人航空機等は航空法で規制されている空域での飛行・規制されている飛行方法での飛行をする場合、原則、第三者上空の飛行は禁止です。

この航空法で規制された空域や飛行方法のうち、第三者の上空の飛行に関わる可能性のある①人又は家屋の密集している地域の上空における飛行②地上又は水上の人又は物件との間に所定の距離を保てない飛行③祭りやライブ会場などの催し場所の上空における飛行があります。

上記の3つの飛行形態は、特に無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止する必要性があり、当然として第三者の上空で無人航空機を飛行させないことを要件として改めて明記されています。

したがって、上記のように第三者に対する危害を防止する・第三者の上空で無人航空機を飛行させないようにするために、厳しい追加基準を満たす必要があるというわけでした。

航空法の規制を受けない条件での飛行であっても、航空法の規制目的の一つが人・物件に対する安全の確保でありますし、第三者を負傷させてしまったら損害賠償を負うリスクもあります。

航空法の規制を受けない条件での飛行であれば、最後は各個人の判断になってしまいますが、その場合でも上記の点を考慮してみても、基本的には第三者の上空を飛行させないように心がけるべきであると思います。

 

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