日常的にも、航空機は道路上を飛行しているのは見たことがある人も多いかと思います。

それでは、一部のドローンをはじめとする無人航空機等も道路上で飛行してもいいのですかと思われる方も少なからずいらっしゃるかと思います。

ここでは、この点につき解説していきたいと思います。

道路の管理主体

道路自体を管理している主体はどこなのかということから解説します。

これは、①道路自体の災害時の復旧や改修などの維持管理に関することか、②道路自体でなくその交通に関わることかで、分類されます。

維持管理に関する管理主体

具体的には、国が管理する国道(直轄国道)の場合は国土交通省の国道事務所、都道府県又は政令指定都市が管理する国道(補助国道)、都道府県道の場合は都道府県等の土木事務所等、市町村道の場合は市町村の土木事務所等が管理主体になります。

つまり、道路の維持管理に関することは、一般的には管理主体は国(国土交通省)及び各都道府県や市町村等になります。

特殊車両通行許可という許可制度がありますが、これら道路管理者に許可を受けるようになっています。

簡単に言えば、無条件に大型の車両を通行させてしまうと道路がダメージを受けてしまうので、審査して許可しますというものです。

この制度からもこれら道路管理者が道路自体の維持管理の管理主体というのもわかるかと思います。

交通に関する管理主体

道路を通行する車両等対して、交通の妨害をしないようにと各都道府県の警察署が管理しています。

したがって、道路の交通に関する管理主体は警察署となります。

以下に示す道路交通法ではないですが、自動車の登録のために各警察署で取得する車庫証明なんかも簡単に言えば、道路以外の場所を自動車の保管場所として確保することで、道路交通の妨害をしないようにするということです。

日々の交通の取締りもそうですが、こういう所からも警察署は、道路の交通に関する管理主体なんだと実感されるところかと思います。

道路交通法

2つの管理主体とその管理内容を見てみると、ドローンの道路上空に関わってくるだろう部分は、警察署が管理する交通の部分です。

ここは、道路交通法が大きく関わってきます。

航空法以外にも道路交通法を遵守するということになります。

そこで、道路交通法でドローンの飛行に関わる部分を解説していきたいと思います。

道路交通法上の「道路」とは

道路を今まで見たことはないかと思いますが、国道・市道・私道などその種類も様々です。

具体的な定義を聞かれてすぐに返答できる方はあまりいらっしゃらないかと思います。

道路上を飛行させるかの解説をしていく上で、道路と何かは前提知識になりますので、ここで改めて確認します。

各法律によって、道路の定義は様々ですが、ここではドローンをの飛行に関わる道路交通法上の「道路」について確認します。

「道路」とは何かについての道路交通法第2条第1項第1号に関して、警察庁のHPに解説があり、以下の①~③の3つの内容があります。

「道路」とは、道路交通法第2条第1項第1号で以下の①から③とされています。

①道路法第2条第1項に規定する道路
一般交通の用に供する道で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道

②道路運送法第2条第8項に規定する自動車道
専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で①以外のもの

③一般交通の用に供するその他の場所
①②以外で不特定の人や車が自由に通行することができる場所をいいます。(不特定人の自由な通行が認められている私道、空地、広場、公開時間中の公園内の道路等)

これを見てみると、①②からは、要は車が交通しているところは「道路」であるとわかります。これはイメージ通りかと思います。

③から、車もそうですが、不特定の人が自由な通行できる状態であれば空地ですら「道路」ということがわかります。

また、「一時的」であっても、不特定の人が自由な通行できる状態にある公開時間中の公園内の道路等も「道路」ということがわかります。

とにかく、不特定の車や人が自由な通行できる状態でありさえすれば、「道路」となります。

道路交通法76条の禁止行為について

上記のように、定義づけられている「道路」では、道路交通法上、禁止されている行為があります。

具体的に、道路交通法第76条で、当該禁止行為が列挙されています。

第七十六条 禁止行為

1 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。

2 何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。

3 何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。

4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一  道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。

二 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。

三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。

四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。

五 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。

六 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。

七 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為

これらの行為につき、警察庁は、①交通の妨害となるような方法で物をみだりに道路に置いたり、②道路上の人や車を損傷させるおそれのある物を投げるなどの行為であり、何人もいかなる場合にあっても、行うことは禁止(絶対的禁止行為)としています。

もう少し簡単にまとめれば、「交通の妨害となるような行為」全般を禁止していると言えます。

道路交通法の原則は「円滑な交通の確保」でありますので、交通の妨害となるような行為は法律により禁止されているわけです。

無人航空機やドローンという単語は明記されていませんが、上記の4項七号で公安委員会の判断で交通の妨害となるような行為と認められる可能性はありそうです。

 

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ドローンの飛行は禁止行為に該当するか

「交通の妨害」となるか?

ここまでの話から「交通の妨害となるような行為」に、ドローンを飛行させる行為が果たして該当するのかということになります。

車の道路での通行を妨害しない十分な高さでの道路の通過は交通の妨害とはならないでしょう。

例えば、道路の100mも上空での道路の通過なら妨害していないことは明確でしょうし、車の高さの上限値の4.1m以下での道路の通過なら妨害となるのは確実です。

しかし、個人からみても判断に迷う飛行高度もありえます。

また、一定程度の飛行高度であっても道路を通過するだけでなく、道路上空を繰り返しする飛行は交通の妨害となるような行為になりえます。

はっきりとした「交通の妨害」となる基準は明確なものはないので、公安委員会によって、状況によって判断が異なることもあり得るわけで、個人で勝手に判断してしまうと道路交通法違反になるリスクがあります。

ドローンの飛行で道路交通法違反にならないためにも、少しでも不安な場合は、道路を管轄する警察署に事前にきちんと確認しておくことが重要です。

ドローンの道路上空飛行に関する各見解

後述する道路使用許可に関するものですが、参考までにドローンの道路上空飛行に関する見解を紹介します。

総務省の一部見解として、「道路交通法は車や人にぶつけるなど道路を通行中の車や人の交通を妨害することが明らかな態様で飛行させるものでない限り、ドローンの道路上空の飛行を禁止していない。」としています。

総務省の見解ではありますが、ここからも、原則、道路上空については低空飛行するなど交通の妨げにならない飛行であれば、道路交通法の規制の対象にならないとわかります。

ドローンを道路上で離発着する場合

ドローンを道路上空で飛行させるのは、明確な基準はないものの交通の妨害にならなければ良いとのことでした。

では、道路に関わるものとして、ドローンの離発着は道路交通法の規制は受けるのでしょうか?

ご存知のように、航空機は離発着するのに一定のスペースが必要です。

ドローンにおいても、航空機ほどではなくとも、こうしたスペースが必要になります。

これは、道路の一時的な占有と言えますし、交通の妨害になるのは明らかです。

また、道路交通法第76条の3項の「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」にも該当するものともいえます。

したがって、道路交通法上は、ドローンを道路上で離発着するのは禁止行為と理解できるでしょう。

道路使用許可で道路上で離発着させる

禁止行為であるドローンを道路上で離発着したい場合はどうすればいいのでしょうか?

この場合、道路交通法77条ににおける道路使用許可を取得すれば、道路上で離発着できることになります。

(道路の使用の許可)
第七十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。

  1. 道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人
  2. 道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者
  3. 場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者
  4. 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

道路は、本来は、人や車が通行するためのものですが、道路工事、工作物の設置、祭礼行事等、実に様々な使用がされています。

そこで、道路交通法では、本来の目的の使用以外のこうしたやむ得ない道路使用行為を許可しているというわけです。

上記のような、道路工事や祭礼行事で、交通規制しているのはよく見かける所かと思いますが、道路使用許可を取得しているのです。

ドローンの離着陸を道路上や路肩等で行う場合も、道路交通法における「道路において工事若しくは作業をしようとする者」に該当するので、道路使用許可を取得する必要があります。

道路上空からの空撮と道路使用許可

これも「交通の妨害にならないような行為」と言えれば、道路使用許可は原則どおり不要と言えるはずです。

この点につき、各見解をご紹介いたします。

総務省の一部見解として、「道路交通法は車や人にぶつけるなど道路を通行中の車や人の交通を妨害することが明らかな態様で飛行させるものでない限り、ドローンの道路上空の飛行を禁止していない。なお、道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすようなロケーション等を行おうとする場合は、ドローンを利用するか否かにかかわらず、道路交通法第77条第1項の規定に基づき、当該行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならないが、これに当たらない形態で、単にドローンを利用して道路上空から撮影を行おうとする場合には、当該許可を要しない。」としています。

また、警察庁は「国家戦略特区等提案検討要請回答」というもので、「単にドローンを利用して道路上空から撮影を行おうとする場合は、現行制度上、道路使用許可を要しない」とも回答しています。

 

やはり、ここでも原則どおり、ドローンの空撮をはじめとする飛行が「交通の妨害にならないような行為」と言えれば、道路使用許可は不要で行えると言っています。

一方、ドローンを利用して道路上空から撮影は、道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼす形態であれば、原則飛行できず、道路使用許可が取得しなければ当該飛行は行えません。

道路交通法77条4項の内容のとおりですね。

まとめ

これまで話してきた通り、ドローンが単に道路上空を通過することに、原則、道路使用許可は必要ありません。

ただ、ドローンの離発着は原則、道路使用許可が必要です。

この場合、不特定多数の車や人が出入りすることのない私有地等であれば、道路交通法の規制がないので、そこでの離発着をされるといいでしょう。

そのような場所がない場合は、原則どおり、道路使用許可を取得してください。

また、航空法においては、第三者上空における飛行は原則禁止されています。

交通規制などで、第三者が飛行区域に立ち入らない状況をつくることが必要ですが、これは交通の妨害となるような行為と言えるでしょうから、やはり、道路使用許可が必要となります。

※第三者に関わる可能性の高い飛行空域・飛行方法の許可・承認を受ける際には第三者上空飛行とならないための追加基準も満たす必要もあります。

さらに、第三者からの通報によるトラブルを考慮すれば、管轄の警察署に事前に連絡をするべきです。

具体的には、管轄の警察署にドローンを飛行する日時、場所、飛行目的、許可の状況などを連絡しておきましょう。飛行場所の近所の交番などが状況を把握して、通報されてしまった時にスムーズに対応してもらえるようになります。

国土交通省においても、安全のため 、鉄道や道路(高速含む)等の上空の飛行は、原則として避け、やむえず、飛行させる場合は安全対策が求めるとしています。

飛行場所も、高速道路などの特に交通量が多く、事故になってしまえば大惨事になるような道路は避けれるのであれば避けるべきかと思います。

 

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